【目的】「氷室」は、江戸時代、加賀藩が江戸の将軍家へ氷を早かごで届けたことに由来する行事である。六月朔日(新暦7月1日)、冬の間に保存しておいた雪を取り出すものであり(氷室開き)、この氷が無事届くよう神社に祈願し、庶民は氷の代わりに麦饅頭を食べたのがはじまりといわれるが、もともと麦の収穫期にあたる6月ごろ、塩味の麦まんじゅうを娘の嫁ぎ先に贈答する習慣があり、それを元に金沢の菓子店があんを入れて商品化したのが始まりという説もある。現在は、赤、白、緑の三色の酒饅頭に、はぜ(いり米)や太い竹輪が用意されており、従来は娘の嫁ぎ先へ
氷室饅頭
を重箱に詰めて届け、届けられた家ではこれを近所や親戚に配っていた。2009-10年に実施している、調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食-」において、この「氷室」を石川県独自の行事として加えて調査したが、本報告では、短大生を対象としたものについて検討したので報告する。
【方法】2010年4月に、K短期大学、H短期大学に在学する学生を対象に調査を行ったが、そのうち、石川県出身者(288名)を対象に集計した。調査内容は、調理科学会特別研究で実施している様式であり、行事の認知、実施状況や、
氷室饅頭
、はぜ、ちくわの喫食状況である。
【結果】1)この行事を知っているものは128名(44.4%)であり、経験しているものは、101名(35.1%)であった。2)この行事に関わる食べ物について、
氷室饅頭
は78名(集計対象の27.1%、経験者の77.2%)が喫食していたが、はぜは1名、ちくわは7名であり、饅頭はひろく喫食されているが、はぜやちくわは少ないことが伺えた。
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