アラスカのフェアバンクス市一帯に於て,気温がおよそ-40°Cに下ったとき,発電所や暖房用の煙突,又は自動車の排気ガスに含まれている水蒸気が多量に放出される。この水蒸気が凝結して水滴を作り,これが凍って濃い
氷霧
を生成する。この地域に於て,温気が-40°Cで生成した
氷霧
,-25°Cで生成した氷晶および-10°Cで生成した過冷却霧滴を電子顕微鏡用グリッドのコロヂオン膜の上に補捉した。これらの結晶および霧滴が昇華又は蒸発したあと,その残渣を電子顕微鏡で観察した。コロヂオン膜の上で昇華した結晶あるいは蒸発した霧滴の中心に直径0.1μないし3μの固形粒子を発見した。これらを電子顕微鏡による観察および電子回折による解析の結果,これらの核は主に石炭,燃料油あるいはガンリンの燃焼によって生ずる有機と無機と吸湿性の物質と同じものであることがわかった。フェアバンクスに於ける,過冷却の霧の核と
氷霧
の核の物質に差異がないので,これらは始め凝結核として働き,およそ気温が-25°C以下でFreezing Nucleiとして働いて
氷霧
ができたものと結論することができる。
排気ガス中の水蒸気が凝結して始め水滴ができ,それが凍って
氷霧
ができる過程は,直接に試料を補捉して確めた。
気温がおよそ-40°Cで出来る
氷霧
の形態は直径2μないし15μのものは主として球形であり,これより大きな直径10μないし30μの結晶は主として六角柱に成長していた。個々の
氷霧
の結晶が附着結合する現象即ち焼結(Sintering)は気温-40°Cに於ても認めた。
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