六君子湯は全身がんに対する化学療法中の悪心・嘔吐に対して汎用されているが,脳腫瘍症例での使用報告はまだわずかに散見されるのみである。今回,悪性神経膠腫に対する放射線併用薬物療法中の悪心・嘔吐に六君子湯が有効であった1例を経験したので報告する。症例は50歳女性。退形成性星細胞腫の維持化学療法中に脳幹および小脳に進展・増大を認めたために,ベバシズマブの投与と同部位に放射線照射を開始した。治療開始4日目頃から悪心・嘔吐の悪化を認め,複数の制吐薬を投与したが症状は改善しないために抗腫瘍治療の一時中断を余儀なくされた。次に六君子湯を投与すると,翌日より速やかに悪心・嘔吐症状は改善を認め抗腫瘍治療も再開可能となった。脳腫瘍の悪心・嘔吐に対する六君子湯の投与について文献的考察を加えて報告する。
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