著者らは,1982年8月に分娩時における下顎骨正中部開放性骨体骨折の一例を経験し,また術後13年間の経過観察を行った。患児は予定日より四週間早く骨盤位で自然分娩にて出生したが,分娩時にファイト・スメリー法をうけ,下顎に裂傷をきたした。患児の下顎正中部の歯肉に裂傷があり,下顎骨が露出し,開放性骨折を認めた。生後2日目にホリゾン静脈鎮静下にて下顎骨体を徒手的に整復し,アクリリックレジン床副子を用いて固定をはかり,綱線にて下顎骨体の2か所において囲繞結紮を行い,14日目に副子を除去した。術後2日目より経管栄養をおこない,10日目より人工栄養に変更したが,哺乳は良好であった。
術後1年3か月では,上下8本の前歯が萌出しており,下顎右側乳中切歯は黄色歯で,やや矮小で,わずかな形態異常と軽度の捻転が認められた。術後8年では,永久歯は10本萌出しているが,下顎右側中切歯の矮小化と,下顎両側中切歯に唇舌的なずれが認められる。術後13年の状態は,_??__??__??_に叢生がみられ,また_??__??__??_の唇側歯肉の瘢痕形成,下顎右側中切歯の矮小化と下顎左側中切歯の半歯分右側偏位,左側中切歯の切端咬合を認めた。上顎右側第二大臼歯は未萌出,下顎右側第二大臼歯は半萌出であった。またパノラマエックス線写真にて,下顎右側側切歯に相当する部位の下顎下縁部に陥凹が認められた。顎骨CT上なんら異常は認められず,開口度は42mmで顎関節エックス線写真でも異常は認められなかった。
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