モウソウチクの小枝にゴールを作るモウソウタマコバチとその寄生蜂3種についての生活環と寄生の経過を京都市西部の竹林において調査した。適当な間隔でいろいろの時期にゴールを採集し,ゴールの中の種を判別し,発育の程度をみて,4種の蜂の発育経過をしらべた。また適当な時期に竹の主枝全体あるいはゴール1個ずつに袋をかける方法によって寄生関係と寄生時期を検討した。その結果,
モウソウタマコバチは5月上旬に羽化し竹の新芽に産卵し,ゴールを作る。1個のゴールに1頭の幼虫が9月まで生長を続け,蛹化して越冬する。
モウソウタマオナガコバチは5月中・下旬に羽化し,モウソウタマコバチの作った若いゴールに産卵する。しかし,モウソウタマコバチ幼虫に寄生するのではなく,客生の生活様式をもち,ゴールを横取りし,モウソウタマコバチ幼虫と同じようにゴールの内壁を食ってすみやかに生長する。8月には体の大きさは最大値に達し,幼虫のまま越冬する。翌春4月に蛹化する。1個のゴールに数個産卵されるが,1頭のみ羽化する。
ナガコバチ科の
Eupelmus sp.はモウソウタマコバチ幼虫に寄生し,幼虫越冬して5月下旬から6月上旬にかけて羽化する。1個のゴールから1頭羽化する。
モンコガネコバチは多化性で,第1回目の羽化は6月に行なわれる。第2回目以後の羽化は8月から10月まで続く。1年に3化する個体があるが,2化か3化のいずれが主要であるかは確認できなかった。数頭の幼虫がモウソウタマコバチ幼虫に寄生し,幼虫で越冬する。ゴール1個から平均約4.4頭羽化する。
羽化成虫の性比は,モウソウタマコバチの雌は雄の約3倍,モウソウタマオナガコバチは雌雄ほぼ同数,ナガコバチの1種は雌が雄よりやや多い。モンコガネコバチの雌は雄の約2.4倍である。
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