地すべりの予知・予測及び防止対策工の計画において, すべり面位置の決定は最も重要な項目である。休止中あるいは滑動後の停止した地すべりでは, その位置は専門的な知識を有する技術者の主観に基づいて, ボーリングコアの地質特性より判定されているのが現状である。しかしながらコア観察においてすべり面位置の判定に関する地質特性などの定量的評価は困難なことが多く, 「非常に・・・・である」あるいは「やや・・・・である」と言った主観に基づいた評価がなされ, この各種評価要因を総合化し, これまで経験的に得られた推論ルールのもとですべり面位置の判定がなされている。このように現在のすべり面位置の判定法は人間の主観的なあいまいさを伴ったものとなっている。
一方, 人間の主観的判定を取り入れたあいまいな判定要因で評価を行う手法としてファジィ理論が注目を浴びている。しかしながら, ファジィ理論の適用においては, 解析に用いる要因のメンバーシップ関数を設定する必要があり, 解析結果はこのメンバーシップ関数に影響される。現時点においては, その分布形状はブレーンストーミング法などを通して経験的に決定されており, その設定に苦慮しているのが実情である。
当論文は, 定量的記述の困難なボーリングコア判定によるすべり面の位置判定手法として, メンバーシップ関数分布形状についてニューラルネットワークの有する学習機能を利用し, 最適形状を求め, 設定されたメンバーシップ関数を用いて, 現在すべり面位置の判定で行われている思考過程に準拠し, これまで得られた経験的知識を勘案できるファジィ推論法の適用を検討した。その結果非常に少ない推論ルールで的確なすべり面位置の判定ができた。当手法は獲得された推論ルール及びメンバーシップ関数を通してこれまで得られた経験的知識の検討が可能なすぐれた汎化能力を有するものである。
定量的記述の困難なボーリングコア判定によるすべり面の位置判定手法として, ニューラルネットワークの有する学習機能を利用し, 設定されたメンバーシップ関数を用いて, 現在すべり面位置の判定で行われている思考過程に準拠し, これまで得られた経験的知識を勘案できるファジィ推論法の適用を検討した。その結果非常に少ない推論ルールで的確なすべり面位置の判定ができた。
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