日本では, 戦後より新築持ち家重視の風潮が強かった。しかし, 2000年代頃より, 中古住宅の利活用によるストック型社会への転換が求められ,2006年に, 住生活基本法が制定され, 同法に基づき『住生活基本計画』が策定された。同計画では,「多様な居住ニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備」が目標として挙げられており, 価値観やライフスタイル,ライフステージに応じた住宅を選択できる住宅市場の実現が目指された。既存住宅利用を進める背景には, 空き家や建設環境負荷に関する課題が社会問題となるなど,社会的な要請の他にも, 既存住宅市場の活性化により, 低価格での住宅取得が可能になることが指摘されており, 既存住宅利用による多様な世帯への住宅供給の実現も期待される。
一方で, 流通する物件は場所に依存することから,地域性を踏まえた活用方法の検討が必要である。中古住宅の地域性は,各ステークホルダーの関係と物件の特徴によって構成される。物件の特徴は,価格や面積などを用いた分類の他にも, 形態による分類としてファサードや平面構成によっても特徴づけられる。平面構成はその当時のニーズの現れあり,平面構成の変化を通じて, 居住ニーズを読み解こうとする研究も行われている。本研究では, 各年代的特徴を踏まえた中古住宅の特徴を踏まえ, 間取りなどの物件の特徴も含めた,空間パターンの分析を行い,中古住宅の地域性について建造環境とステークホルダーの関係をもとに分析を行った。また,⼤阪府内の⼾建て住宅を対象とし, 住宅情報サイト掲載の中古⼾建て住宅の 物件データを⽤いて,中古不動産の地域性についても調査を⾏った。
筆者のこれまでの研究から, 中古不動産の分布には, 地域によりいくつかの異なるパターンが見られた。また, 新築住宅のそれと比較する中で, 間取りなどに異なるパターンが見られたことから、住宅市場における, 多様な居住ニーズへ対応していると考えられる。 一方 , 建物の分布には偏りがあり,またステークホルダーの関係も異なることから, その対応には, 地域ごとに異なった課題が存在することが予想される。
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