ニューキノロン系経口抗菌剤T-3761の呼吸・循環器系, 自律神経系およびその他に対する薬理作用について検討し, 以下の成績を得た。
1. 呼吸・循環器系に対する作用
T-3761は100~1,000mg/kgの経口投与でラットの血圧および心拍数に対し影響を与えなかった。
T-3761を麻酔イヌに静脈内投与した場合, 30~100mg/kgで呼吸数増加, 10~100mg/kgで血圧下降, 心拍数増加または減少, 3~100mg/kgで後肢血流量の一過性の増加後減少を示した。また, 心電図では10~30mg/kgでST下降, 100mg/kgでT波増高およびQRS低電位化が認められた。以上の麻酔イヌでのT-3761の作用は, LevofloxacinやCiprofloxacinに比較して軽度であった。一方, 麻酔ウサギへの静脈内投与では, 100mg/kgで呼吸数増加または減少, 10~100mg/kgで血圧上昇, 30~100mg/kgで心拍数減少, 心電図では30mg/kgでT波増高, 100mg/kgでT波増高および期外収縮が認められた。これらの変化は早いもので5分以内, 遅いもので20分以内に消失した。
2. 自律神経系および平滑筋に対する作用
T-3761の10
-5~10
-4g/mlでEpinephrineによるモルモット摘出輸精管収縮の増強, 10
-4g/mlでAcetylcholineによるモルモット摘出回腸収縮の抑制, Epinephrineによるモルモット摘出気管弛緩の抑制およびNorepinephrineによるウサギ摘出下行大動脈収縮の増強が認められた。また, T-3761の1,000mg/kg経口投与でマウス瞳孔の散大が認められた。
3. 消化器系に対する作用
T-3761の10
-4g/mlでウサギ摘出回腸および結腸運動の抑制, T-3761の1,000mg/kg経口投与でラット胃排出能およびマウス腸管輸送能の抑制が認められた。
4. 泌尿・生殖器に対する作用
T-3761の300mg/kg経口投与でラットの尿中Na
+排泄量が僅かに増加した。一方, 摘出子宮運動に対しては10
-6~10
-4g/mlで何ら作用を示さなかった。
5. 血液に対する作用
T-3761は溶血, 血液凝固および血小板凝集に対し10
-6~10
-4g/mlで影響を及ぼさなかった。また, 出血時間に対しても100~1,000mg/kg経口投与で影響を及ぼさなかった。
6. その他の作用
T-3761は100mg/kg静脈内投与でラット坐骨神経腓腹筋標本の電気刺激による単収縮を軽度抑制した。また, T-3761の300~1,000mg/kg経口投与でラット後肢Carrageenin浮腫の軽度増強が認められた。
T-3761には, 以上述べたような薬理作用が認められたが, これらの作用はほとんどが高用量で発現し, いずれも軽度か一過性のものであった。
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