地球温暖化の影響は,水温上昇などを通じて固着生活を送る底生生物の分布域変化として現れる.長崎県の褐藻ホンダ
ワラ類藻場(ガラモ場)では,温帯性から亜熱帯性への種組成の変化が既に報告されている.日本周辺ではホンダワラ類
アカモクは流れ藻を構成する卓越種で広域に分布する.そこで,沿岸の2000年2月と8月の表面水温分布をもとにアカモ
クが分布する最低・最高水温範囲を求め,九州大学応用力学研究所開発の海況予測モデルDREAMS_B のRCP8.5温暖化
シナリオで得た2100年2月と8月の表面水温からアカモクの生息可能沿岸域を推定した.その結果,2000年に日本周辺の
25°N から45°N の沿岸に分布していたアカモクは,2100年には35°N から45°N の沿岸に縮小し,縮小原因は8月の水温で
あった.東シナ海はブリの主要産卵場で,稚魚輸送にアカモク流れ藻が重要な役割を果たしているが,2100年にはその減
少が稚魚輸送を妨げる.このように温暖化に伴う藻場分布域の変化は海洋生態系に広く影響を及ぼす.
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