卵巣粘液性嚢胞腺癌患者の手術時摘出腫瘍組織から, inuitroで継代可能な細胞株 (MN-1) の樹立に成功した. さらに, MN-1のsinglecellcloningより細胞学的特性の異なる2種類の亜株細胞MN-1A, MN-1Bを分離樹立した. 親株MN-1は, 初代培養開始後, 1年8ヵ月を経て, 1991年1月現在, 第113代に, また, 亜株MN-1Aは第90代, 亜株MN-1Bは第76代にいたっている.
MN-1細胞の倍加時間は29.4時間, 染色体数は94~104に分布し, 高4倍体領域の102にモードを認めた. 一方, MN-1Aの染色体数分布は低3倍体領域に低下, 倍加時間は40.0時間, また, MN-1Bでは親株と同様に高4倍体領域にモードを有するが, 倍加時間は32.0時間であった. 形態学的観察でも, MN-1Aが敷石状に配列し重積性に乏しいのに対し, MN-1Bでは紡錘型細胞が著しい重積を示し, 両者に明らかな差を認めた. また, 両亜株細胞ともnudemouseに移植可能であるが, MN-1Aが高分化型腺癌像を呈したのに対し, MN-1Bでは低分化像が観察された.
以上より, 親株細胞MN-1より細胞学的特性の異なる2種類の亜株細胞が樹立され, 複数の細胞クローンで構成されると予想される癌組織の特性を検討する上で有用な株細胞系であると考える.
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