1 9 8 6 年6 月から1 9 8 8 年4 月までの約2 年間に, 徳島大学歯学部附属病院において,含歯性嚢胞と診断された小児10名11例を経験し,全症例に対して可及的嚢胞壁摘出法および舌側弧線装置による保隙を行い,その治癒経過について検討した。
経過観察期間は,最長28カ月,最短6カ月,平均15.9カ月であった。性差があり,男児に多く認められた。発見時の年齢は9歳が最も多く,HellmanのDental age III Aと III Bに集中していた。発現部位は,下顎第2小臼歯に最も多く認められた。先行乳歯は,すでに抜歯されていたり, 残根状態であった2 例を除いて, 健全であったものは上顎に認められた1例のみで,他はすべて歯髄処澱の既往があった。オルソパントモX線写真上の嚢胞の大きさは, 近遠心径が1 5 m m-3 5 m m のものが9 例, 5 0 m m - 5 5 m m のものが2 例であった。嚢胞内永久歯の状態は,遠心偏位,近心偏位,頬側傾斜,偏位傾斜なしの4タイプが認められ,遠心偏位のものが術後の永久歯胚の萌出速度が最も速いことが認められた。治癒の早さは従来の開窓法と比べ, 嚢胞消失までは早く, 嚢胞内永久歯の萌出はやや遅かった。全例とも嚢胞が消失し,しかも11例中8例は,矯正治療の必要なく嚢胞内永久歯を,正常な歯列内に萌出させることができた。したがって,小児における含歯性嚢胞の処置として,可及的嚢胞壁摘出法と舌側弧線による保隙装置の併用法はきわめて有効であることが認められた。
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