抄録
1984年から1990年までの6年間に,九州大学歯学部附属病院小児歯科外来において含歯性嚢胞と診断された4歳10カ月から14歳10カ月までの小児16例を経験した.発見時の平均年齢は約10歳であり,男児に多く認められた.発見の機会は,無痛性の顎骨や歯肉の腫脹によるものが最も多く,次いで定期診査時に偶然発見されたものであった.発症部位は,25歯のうち,下顎第1小臼歯が12歯および下顎第2小臼歯が10歯であった.
先行乳歯は,不明歯2歯を除き,すべてが何等かの齲蝕処置を受けた経験があり,23歯中21歯が,Hellmanの発育段階II A期からII C期にかけて歯髄処置ならびに歯冠修復処置を受けていた.それらの処置経過の判明した症例では,ほとんどが処置後3年から6年経過時のIII B期に嚢胞の発症をみた.このことからも,定期診査の重要性が示唆された.
術前の歯列咬合診査により,咬合誘導の観点から,自然萌出を期待する症例,保隙処置が必要な症例,および動的咬合誘導が必要な症例の3群に,先行乳歯の抜去と嚢胞の開窓後の治療方針を分けた.現在も経過観察中の2例および本学歯科矯正科紹介の1例を除き,いずれの歯も歯列内の正常位置へ萌出誘導することができた.