批判的経営学は,問題意識としては近代経営学の方法論的問題点を乗り越えようという意図があり,中西寅雄が提起した学説(以下,中西説と表現)は批判的経営学の主流派である個別資本説の起源と位置づけられる。「個別資本と企業における経営現象との結びつきをどのように把握するのか」という論点が方法論上の中核であり,「個別資本」をどのように概念規定し,企業における経営現象を個別資本との関連でどのように位置づけるのか,が最重要課題となる。
本稿では,まず,批判的経営学の起源とされる中西説を批判的に吟味し,次に,
片岡信之
による「企業の生産関係説」(以下,片岡説と表現)が,中西説の持っていた「原罪」的枠組みを刷新する枠組みを提供していることを指摘した。そして,批判的実在論が提供する社会存在論を基礎にした枠組みが,片岡説の未解決点を乗り越えさせてくれることを主張した。
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