本稿の研究目的は次の3 点を論じることである.①障害者たちは,法制度制
定に対し,どのような運動を展開してきたのか,②必要な介護内容や介護量を
得るにあたって,障害者たちは市町村にどう働きかけてきたのか,③行政と障
害者運動との関係の変容と,障害福祉サービスが制度化された現在における課
題,である.
障害者運動は国に対し,自身の生活実態に沿った要求提示を行い,政策提言
を行ってきた.そして障害者たちは,介護サービスを受けるにあたり,各市町
村への働きかけを行ってきた.本稿では大阪市を例に挙げ,介護の支給をめぐ
る市と障害者団体との検討の内容と経緯をみた.そこで,制度構築において障
害当事者・支援者の声を拾い上げ,共有する場の必要が明らかになった.これ
までの議論を踏まえ,行政と障害者運動との関係が「対決」のみならず「協働」
というキーワードで語られうることと,協議・協働が可能となるような場と仕
組の設定が,今後の障害福祉における課題となることを述べた.
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