本研究では,高齢者が「閉じこもり」に至る経過の中で,外出頻度が少なくなることに着目し,障害老人の日常生活自立度判定基準(厚生労働省)の「ランクJ」に該当するが,相対的に外出頻度が週2〜3回以下と少ない,いわゆる「閉じこもり」予備軍において,その特徴的な身体・社会的要因および心理的要因を総合的に検討することを目的とした.A県で市の在宅虚弱高齢者向けの機能訓練事業等に参加している高齢者161名(男性47名,女性114名)を対象とし,質問紙により,外出頻度,身体的項目,社会的項目,心理的項目などを調査した.外出頻度により,「ほぼ毎日外出する者」と「週2〜3回以下の者」の2群に分類し,また,その外出目的によって,「他人との交流が多くある外出者(以下「交流系外出者」)」とそれ以外の者に分類して,他の要因との関連性を検討した.その結果,次のことが明らかとなった.1.性別や年齢,配偶者の有無,家族形態や居住年数の違いなどの基本属性によって,外出頻度の違いはみられなかった.しかし,家族形態では,単身や夫婦のみで暮らしている者の交流系外出の割合が有意に低かった.2.健康状態と外出頻度の関係では有意な差はみられなかった.3.外出サポートの有無が外出頻度と有意な関連性を示した.一方,交流系外出の割合は,地域行事の参加の程度や,外出サポートの有無と有意に関連していた.4.心理的要因では,
生きがい
と役割意識が,外出頻度と有意な関連性を示した.5.外出頻度を従属変数とし,関連が示唆された5項目を説明変数として多重ロジスティック回帰分析を行ったところ,外出サポートの有無と役割意識の2変数が選択された.
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