胃潰瘍の円形瘢痕56病変を対象とし,潰瘍の組織学的修復度と術前に施行したCongored-methylene blue testによる内視鏡所見を対比検討した.周辺胃粘膜とほぼ同じ程度まで修復されたUl4の瘢痕では,内視鏡的には瘢痕面と周辺粘膜との間にはニーボー差を認めず,瘢痕面全体に顆粒像がみられ,発赤を伴なわないものが多くみられた.腺構造を有する上皮系の相当な再生が潰瘍の表面を被ったUl3の瘢痕では,瘢痕面は陥凹し,顆粒像は瘢痕面の周辺のみに認められ,均一な発赤を伴なうものが多い.瘢痕面の一部に小組織欠損を伴なうUl
3+1またはUl
3+2では,瘢痕面は陥凹し,顆粒像は瘢痕面の周辺のみに認められ,不均一な発赤を伴なう.色素内視鏡検査法では,胃潰瘍の組織学的な修復度の識別が可能で,その適中率は85.7%であった.内視鏡的には,Ul
3+1またはU1
3+2をH
3 stage,U1
3をincomplete scar, Ul
4をcomplete scarと分類し,胃潰瘍の治癒判定は「白苔の消失」をもって行なうことが,臨床的には妥当と考えられる.しかしincomplete scarよりの再発が有意に高率であることを考慮し,complete scarにいたるまで内科的治療および経過観察を行なうことが必要である.また白苔の消失を内視鏡的に判定するためには,丹念な観察が必要で,このためには色素内視鏡検査の併用が必要である.
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