斜面における水文的な律速過程の場の解析の簡易化を図るため,土壌塊としての透水性に着目し土壌塊透水係数と土壌塊貯留量流出量関数を導入し,その性質を明らかにし簡単な近似式を求めた。両者とも定常状態の圧力水頭のプロフィールを基礎としており,土壌塊両端の圧力水頭と定常状態のフラックスに着目したものが土壌塊透水係数であり,土壌塊全体の水分量と定常状態のフラックスに着目したものが土壌塊貯留量流出量関数である。前者は圧力水頭の勾配の絶対値を土壌塊の軸の勾配の0.5倍以上と制限した場合には土壌塊両端の圧力水頭との間に一義的な関係が見いだされ,さらに土壌塊の長さを100cmとした場合には多項式で近似できた。後者は双曲線で近似され,土壌塊の長さとの関係も明らかになった。土壌塊としての透水性に着目した以上の解析は,斜面表層土壌の水文的特徴をとらえるために有効であると考えられた。
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