症例は47歳女性である.20XX年12月下旬,喉の違和感と呼吸困難感を主訴に当院呼吸器内科を受診した.頸胸部造影CT検査で心嚢液貯留を認め,循環器内科へ入院した.諸検査後,心嚢液の増加を認めなかったため年末に一時希望退院とした.しかし,数日後に意識消失・低血圧で救急搬送され,心タンポナーデの診断で緊急入院した.心嚢穿刺を行い,血性心嚢液500 mLをドレナージした.PR3-ANCAとMPO-ANCAの両者陽性が判明したため,ANCA関連血管炎による心膜炎をまず疑い,ステロイド治療を開始した.ステロイドを維持量まで漸減した後,他の原因検索目的で冠動脈CTと冠動脈造影を追加で施行した.精査の結果,破裂後に血栓化した冠動脈肺動脈瘻が明らかとなった.外科的切除術を施行し,術後は経過良好である.冠動脈肺動脈瘻は比較的稀な冠動脈奇形であるが,それが動脈瘤化しての破裂例は非常に稀である.本症例を含めて本邦では32例の報告があり,文献的考察を加えて報告する.また本症例におけるANCA関連血管炎の関与は不明であった.
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