2009年にユネスコによって「危機言語」として指定された奄美語の現況を,本土出身の研究者(松本)と島出身のnative speaker(田畑)という異なった立場を持つ二名が,それぞれの立場から粗描した。粗描の方法は「1960年代までの奄美語」,「1970~80年代の奄美語」,「1990~現代の奄美語」に分け,それぞれの時代における奄美語の状況を,両名の直接見聞をふまえて述べる。(結論的にいえば)両名は,1960年代まではシマユムタ(伝統的方言)が生きて使われていた時代,1970~80年代はトンフツゴ(奄美共通語)が急速に広まった時代,1990年~現代はシマユムタが急速に消滅している時代ととらえている。 また,論文末には,明治以降に奄美大島旧笠利村赤木名集落の人々によって再開拓されたトカラ列島諏訪之瀬島の言語事情についても現況を簡単に報告した。
本研究は超高齢者の精神世界に焦点を当て,エイジングのポジティブな発達がもたらす超越的な世界観である「老年的超越」の形成要因を明らかにすることを目的に,奄美群島の超高齢者11人に半構造化面接調査を実施し,その語りをM-GTAで分析した.
その結果,「老年的超越」を促進する要因は,日々の営みにおける「目標は100歳」という生を追求する超高齢者自身の能動的な生活姿勢にあり,それは子どもや近隣の支援環境と生死を体験した戦争から得た知から形成され,生活満足を感じる過程で「自我超越」「執着超越」「宇宙的超越」の3つの要因からなる「老年的超越」が形成されることが明らかになった.つまり,超高齢者のサクセスフル・エイジングは,「老年的超越」を内蔵したポジティブな生のなかから,中・高年期とは異なる豊かな精神世界を形成していくものではないかと思われる.
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