2009 年 30 巻 4 号 p. 477-488
本研究は超高齢者の精神世界に焦点を当て,エイジングのポジティブな発達がもたらす超越的な世界観である「老年的超越」の形成要因を明らかにすることを目的に,奄美群島の超高齢者11人に半構造化面接調査を実施し,その語りをM-GTAで分析した.
その結果,「老年的超越」を促進する要因は,日々の営みにおける「目標は100歳」という生を追求する超高齢者自身の能動的な生活姿勢にあり,それは子どもや近隣の支援環境と生死を体験した戦争から得た知から形成され,生活満足を感じる過程で「自我超越」「執着超越」「宇宙的超越」の3つの要因からなる「老年的超越」が形成されることが明らかになった.つまり,超高齢者のサクセスフル・エイジングは,「老年的超越」を内蔵したポジティブな生のなかから,中・高年期とは異なる豊かな精神世界を形成していくものではないかと思われる.