ビスフェノールF系エポキシ樹脂に界面反応法で合成した多孔質壁中空球形シリカ粒子 (多孔質シリカ粒子) を充てんした複合体を合成し, 充てん粒子の表面積, 細孔径及び吸着水が複合体の力学的, 熱的性質に与える影響を動的粘弾性, 熱的特性 (線膨脹率, DSC), 曲げ強さ, 衝撃強さを測定することによって調べた. その結果, 動的粘弾性及びDSC測定により求めたガラス転移点
Tgは多孔質シリカ粒子の吸着水の増加とともに低下した. これは吸着水がエポキシ樹脂硬化剤ヘキサヒドロ無水フタル酸の能力を低下させ, 充てん粒子表面付近のエポキシ樹脂の硬化が不十分になったためと考えられた. 貯蔵弾性率及び
Tg以上での熱膨脹係数は多孔質シリカ粒子の半径約4nm以上の細孔の表面積への依存性を示し, 表面積が増加すると, 貯蔵弾性率は増大,
Tg以上での熱膨脹係数は減少した. このことより, エポキシ樹脂と力学的
相互作用
に有効な細孔の半径は, 約4nm以上であると推定された.
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