骨粗鬆症と歯周病の関係を把握する一助として, 閉経後成人歯周炎患者の骨粗鬆症所見を調査した。対象は, 愛知学院大学歯学部附属病院歯周病科通院患者で, 本研究の主旨に同意の得られた閉経後成人女性38名 (58.6±18歳) である。被験者は, 腰椎X線写真により, 骨萎縮の認められない骨萎縮正常群18名 (N群, 57.0±12歳) と骨萎縮群20名 (A群, 60.0±15歳) に区分し比較した。骨密度は, 二重エネルギーX線吸収法により測定した。腰椎骨密度, 若年成人平均値に対する比率および同年代平均値に対する比率は, それぞれN群0.902±0.029g/cm
2, 83.2±2.7%, 105.6±3.4%, A群0.763±0.030g/cm
2, 69.2±2.6%, 90.8±3.4%で, A群の腰椎骨密度は低下していた (p<0.05) 。身体所見と生活習慣は, 両群に顕著な差異はなかった。現在歯数と処置歯率は, N群26.0±0.6歯, 46.3±4.2%, A群23.0±10歯, 56.8±5.3%であった。プロービングデプスとアタッチメントレベルの平均は, N群2.6±0.2mm, 3.3±0.2mm, A群2.7±0.1mm, 3.5±0.2mmであった。しかし, プロービング時の歯肉出血率は, N群19.2±3.9%, A群30.8±4.3%で, A群が高値を示した (p<0.05) 。また, 歯槽骨吸収歯率と高度歯槽骨吸収歯率は, N群53.1±7.5%, 22.7±4.4%, A群63.5±6.5%, 29.6±5.4%で, A群が高い傾向を示した。本研究の結果, 腰椎の骨萎縮所見が認められた被験者においては, 歯周病活動度が高く, 歯槽骨吸収が高度な傾向にあることが判明した。
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