新しい注射用カルバペネム系抗生物質であるBiapenem (L-627) について4菌種定着マウスおよび小児臨床例の腸内細菌叢に及ぼす影響を検討した。
Escherichia coli. Enterococcus faecaliS. Bactemides fhagilis, Bifidobacterium breveの4菌種を腸管内に定着させた4菌種定着マウスにL-627 40mg/kgを1日1回, 連続5日間筋肉内投与した結果,
E. coliで軽度の減少が認められた以外には, いずれの菌種についても糞便中の生菌数に投与期間中大きな変動は認められなかった。
小児臨床例における検討は細菌感染症の小児5例 (男児3例, 女児2例, 年齢1ヵ月~7歳7カ月, 体重4.62~21.8kg) に対し, L6271回6.0~11.7mg/kgを1日3回, 7~11日間静脈内投与して行った。その結果好気性菌では
E. coliをはじあとする
Enterobacteriaceaeが全症例で著明に減少する傾向が認められたが,
Enteroccusについては大きな変動はなく, その結果好気性菌総数は各症例とも大きな変動は認められなかった。嫌気性菌では, 乳児例で優勢菌種である
Bifidobacterium, Bacteroides Eubacteriumが著明に減少する場合が認あられ, このうち1例では嫌気性菌総数が著明に減少して便性に変化 (下痢) が認あられた。ブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌や真菌が優勢菌種となる症例は認あられなかった。こうした腸内細菌叢の変動は本薬の投与中止後は速やかに回復する傾向が認められた。4例で投与中の糞便中からL-627が検出され, その濃度は0.24~2.22μg/gであった。
Clostridium difficileの検出された症例はなく,
C. difficile D-1抗原は2例で検出されたが, その消長と便性に関連性はなかった。
以上の成績からL-627の腸内細菌叢に及ぼす影響は, 新しいβ-ラクタム系抗生物質の中では比較的少ないものと思われる。
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