心疾患383例に冠動脈造影を施行し,左冠動脈入口部にのみ有意の狭窄を認めた3例について,心電図および臨床的特徴を検討した.3例とも40歳代前半の女性で,梅毒,大動脈炎症候群などの既往歴はなく,狭心痛が頻発するため来院しており,発作時の心電図ではaVRでST上昇,他の誘導でST下降またはT波の陰性化を認め,広範な心内膜下虚血が疑われた.運動負荷中の心電図では,充分心拍数を増加させることにより,2mm以上のST下降を認めた.冠硬化症に対する危険因子として,症例2では糖尿病,喫煙が認められたが,他の2例は危険因子をもたなかった.このような点から,入口部の病変の成因には冠硬化症とは違った機序が関与していることが示唆された.
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