本邦で麻酔科が誕生して以来半世紀以上経つが, 麻酔科の存在が社会に十分に浸透し理解されているとはいえない. その理由は, 患者や術者の関心は患者の 「局所」 に限局しているのに対し, 麻酔科の医療が患者の 「全身」 を対象としており, 麻酔科医と術者や患者の視野に大きな齟齬が認められることに加え, 「麻酔」 が本質的にホメオスターシスの安全域を拡大することにあり, 具体的に患者や手術者の目には見えないためである. 麻酔科医は “In Cura Jucunditas” (Amenity in Care) をモットーに, 不断の日常の診療, 活発な学会活動を通じて麻酔科に対する社会の認識を高める必要がある. 医療事故予防のための医学史的手法, 本学会の名称についても言及した.
抄録全体を表示