膜内に2種類の異なる荷電基をもつ荷電モザイク膜において優先的な電解質輸送特性が明らかにされてきたが (負の反射係数), 本研究では更に異なる条件下での物質輸送を調べた. 即ち, 対象とする膜の一方にKCl, もう一方にスクロースを加えた系で, 両相の溶質の当量濃度を等しくし, みかけ上両相問に浸透圧が発生しない系を設定した. その系の体積流束および塩流束をKCl濃度の関数として測定し, 更に膜の溶媒/溶質透過性を示す反射係数を求め, KCl/水系と比較した. その結果, KCl/水系に比べてKCl/スクロース系の体積流束は大きく, 塩流束は小さく現れた. これは溶質の膜を介した拡散に伴う水の移動と生じた溶質濃度差による浸透平衡のずれを補償するための水移動が体積流束の増加となって現れたものと推測された. そのため, KCl/水系に比べて小さな塩流束もスクロース側に大量に移動した溶媒である水の希釈効果が現れたものと思われる. 一方膜物性を反映する膜パラメーターである反射係数は両系でほぼ同じ値を得た. 全体として脱塩効果はKCl/水系に比べて弱まる結果となった.
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