糖尿病
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委員会報告
アンケート調査による日本人糖尿病の死因―2011~2020年の10年間,68,555名での検討―
中村 二郎吉岡 成人片桐 秀樹植木 浩二郎山内 敏正稲垣 暢也谷澤 幸生荒木 栄一中山 健夫神谷 英紀
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2024 年 67 巻 2 号 p. 106-128

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抄録

アンケート調査方式で,全国208施設から糖尿病症例68,555名,非糖尿病症例164,621名(計233,176名)が登録され,2011~2020年の10年間における死因を解析した.1)糖尿病症例における死因の第1位は悪性新生物38.9 %(肺癌7.8 %,膵癌6.5 %,肝臓癌4.1 %),第2位は感染症17.0 %,第3位は血管障害10.9 %(脳血管障害5.2 %,虚血性心疾患3.5 %,慢性腎不全2.3 %)で,悪性新生物の増加および血管障害の減少傾向が継続していた.虚血性心疾患のほとんどが心筋梗塞であり,虚血性心疾患以外の心疾患が9.0 %と高率で,ほとんどが心不全であった.糖尿病性昏睡は,0.3 %と低率であった.2)非糖尿病症例と比較して糖尿病症例では,悪性新生物,感染症,慢性腎不全,虚血性心疾患および心不全の比率が有意に高く,脳血管障害の比率は有意に低かった.3)糖尿病症例において,悪性新生物は各年代で死因の1位であり,50歳代および60歳代では約半数を占めた.感染症は,70歳代以降で最も比率が高かった.血管障害は40歳代および50歳代では感染症の比率を上回っていた.虚血性心疾患は,40歳代で他の年代に比して高率で,慢性腎不全は70歳代以降で最も高率であった.虚血性心疾患以外の心疾患としての心不全は,70歳代以降で最も高率であった.4)糖尿病症例において,膵癌は全ての年代において非糖尿病症例に比して著明に高率であった.糖尿病症例で感染症を死因とする比率は,全ての年代において非糖尿病症例よりも高く,50歳代以下では非糖尿病症例の2~3倍であった.糖尿病症例における慢性腎不全および虚血性心疾患は全ての年代で非糖尿病症例よりも高率であった.脳血管障害は全ての年代で糖尿病症例では非糖尿病症例よりも低率であった.虚血性心疾患以外の心疾患としての心不全は,全ての年代において糖尿病症例で非糖尿病症例よりも高率であった.5)糖尿病症例の平均死亡時年齢は,男性74.4歳,女性77.3歳で,日本人一般の平均寿命に比して,それぞれ7.2歳,10.4歳短命であったが,前回調査と比べて男性で3.0歳,女性で2.2歳の延命が認められ,日本人一般の平均寿命の伸び(男性2.0歳,女性1.4歳)より大きく,日本人一般の平均寿命と糖尿病症例の平均死亡時年齢の差の縮小が継続していた.6)全死因での平均死亡時年齢は,血糖コントロール不良群(HbA1c≧8.4 %)で良好群(HbA1c<8.4 %)に比し1.6歳低かった.虚血性心疾患,脳血管障害,心不全,感染症および糖尿病性昏睡では,血糖コントロール不良群で平均死亡時年齢が低かった.7)全死因における平均死亡時年齢は,非糖尿病症例と比較して男女ともに糖尿病症例で有意に高かった.死因別の平均死亡時年齢は,非糖尿病症例と比較して糖尿病症例では悪性新生物および脳血管障害で有意に高く,感染症,慢性腎不全および虚血性心疾患で有意に低かった.

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© 2024 一般社団法人 日本糖尿病学会
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