目的 秋田県は乳歯う蝕の多い地域であり,2002年度の 3 歳児一人平均う歯数の都道府県順位は全国最下位であった。秋田県は乳歯う蝕の減少を目的に,2004年 3 月から PRECEDE–PROCEED model による住民主体型の歯科保健活動を実施したことから,その成果について報告する。
方法 対象地域は,2002年度のう歯数が5.5本と,秋田県で一番う蝕の多かった鳥海町とした。2003年度の 3 歳児健診時に保護者49人にアンケートを実施し,乳歯う蝕が多い要因を抽出した。抽出された課題を協議する組織として,乳幼児の保護者,歯科医師,歯科衛生士,保育園長,行政職員等で構成された協議会を設置した。協議会では,アンケート結果等を基に乳歯う蝕に関する目標値を設定し,保護者の歯科保健習慣改善に向けて優先的に取り組む項目ごとに 5 つのチームを結成した。活動計画の策定を行い,フッ化物歯面塗布の実施や保護者宛の便りの発行といった対策を実施した。3 歳児一人平均う歯数•う蝕有病率および2006,2008年度のアンケート結果,事業資料等により評価した。
結果 2003年度と2008年度(保護者33人)のアンケート結果を比較すると,優先的に取り組んだ 4 項目中 2 項目が有意に改善した(「哺乳瓶に甘いものを入れて飲ませている保護者の割合」47%→9%:
P<0.01,「仕上げ磨きを毎日している保護者の割合」57%→91%:
P<0.01)。また,QOL 指標である「子どもの歯が原因で何か困りごとがある者の割合」が減少した。3 歳児一人平均う歯数は2003年度の3.5本から2008年度は1.6本に,う蝕有病率は56%から27%に減少した。
結論 住民主体の歯科保健活動により,保護者の子どもに対する歯科保健習慣の改善と乳歯う蝕の減少が確認された。事業終了により2008年度で協議会は解散したが,2009年 6 月に住民による自主活動組織が作られ,啓発活動が継続されていることから,地域住民の歯科保健意識が変化し,活動が地域に定着したものと考えられる。
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