ジャイアントパンダの疑似母指は"パンダの親指"として有名であるが, レッサーパンダの疑似母指骨格に関する報告はほとんどみられない。本報告では2例のレッサーパンダを用いて, 主要骨格の所見ならびに手根部骨格のひとつである橈側
種子骨
の形態とそれに付着する筋肉などについて調べた。手根部骨格は, 他の食肉目と同様に7種の骨からできており, 中間橈側手根骨の外側には1個または2個の
種子骨
がみられた。この橈側
種子骨
は第一中手骨の2分の1程度の長さがあった。2例から橈側
種子骨
の発生過程を考察すると, 初めから大きな
種子骨
ができるのではなく, 2種類の筋肉内で各々に発生, 成長した
種子骨
が合体して形成されると考えられた。橈側
種子骨
には, 短第一指外転筋と短第一指屈筋ならびに長第一指外転筋が付着していた。また, 橈側
種子骨
の外側を固定する靱帯としては, 手根
種子骨外側靱帯と中手種子骨
背側靱帯があり, 手掌側を固定する靱帯として手根横断靱帯と手根
種子骨
手掌靱帯が認められた。レッサーパンダの橈側
種子骨
は, ジャイアントパンダと同じように疑似母指として機能可能な運動性を有することが示唆された。
抄録全体を表示