生きた樹木のシロアリ類による被害とされるものを,全世界の地域別事例の網羅,生態および防除の観点からレビューした.シロアリと樹木の相互関係の現象を正しく理解するには,両者が生存に向けた進化的に最適な戦略をとることを考慮することが必要である.シロアリの行動生態学および樹木生理学をもとに現象を検討すると,世界中の樹木生木のシロアリによる被害のほとんどが,(1)両者間の共生の結果生じたもので樹木の適応度を下げることがない現象,または(2)他の原因により樹木が衰弱することでシロアリが日和見的に加害している現象,のいずれかであるという仮説が導き出される.建築物とその周辺の樹木を同時に加害するシロアリを防除するにはIPM理論に則った試みが必要で,多くの場合ベイト剤が適切である.また日本国内では,屋内と屋外の殺虫剤施用に関する別々の登録システムの問題を改善する施策が求められる.
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