日本の民族スポーツの一つである相撲は、興行や民俗的な行事として行われるだけでなく、男女ともに競技スポーツとしても行われている。競技スポーツとしての女子相撲は、発足当初こそ技の制限や専用の試合着が導入されていたが、近年では男性と同様のルールで行われている。
一方、大正15年(1925)に、女子向けの競技と謳って相撲を改変した「アウトゲーム」なる競技が考案されたことがあった。本競技は雑誌記事や書籍にて発表されたのみであり現在では実施者は確認できず、結果としては定着していないが、これも民族スポーツの競技化の一事例とみることもできよう。
そこで本発表では、本競技の考案者の相撲観ならびに女性スポーツ観と競技形態の関連について報告する。「相撲は日本の国技である」という意識や体力、護身力の養成という理由から女性に相撲を推奨する一方、「優味を持たせる事は必要」、「平和な女性らしい心持ち」などといった記述にみられるように、男性同様の格闘を女性に求めない考案者の姿勢が、密着しての押し・寄りを中心とした競技に繋がったと考えられる。
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