2021 年 51 巻 p. 141-159
本稿では,読書環境のデジタル化の進行がもたらす認識空間の変容について,歴史的,記号論的観点から分析を行う.まずコロナ禍に置かれた2020年上半期の日本の出版界の売上状況を確認した上で,電子書籍の黎明を〈アメリカのプログラム〉という概念を手がかりに歴史的に捉え返す.そして3つ目にアナログ読書からデジタル読書への移行をC・S・パースの記号論の知見などを手がかりに考察する.読書環境の変容を史的,意味論的観点から分析することで見えてくるのは,我々の〈他者〉意識の変容でもあった.