将棋に熟達者の中には、将棋盤の様子を頭の中にイメージし、 その局面についての判断に利用できる人がいる。このような将棋盤の視覚イメージは、将棋を指す人の間で、「脳内将棋盤」と呼ばれる。将棋やチェスといったボードゲームにおいて、局面の記憶や、次の一手の決定に関する熟達については研究が行われてきたが、視覚イメージの利用に関する研究は十分に行われていない。 そこで、本研究では脳内将棋盤がどのように体験されているのか、また、その見え方に個人差はあるのかを明らかにするため、インタビュー調査を実施した。調査の結果、熟達するほどイメージできる範囲は広く、より先の局面までイメージできる傾向がみられた。一方、色の有無、駒の種類の表現などは、熟達と関連がみられなかった。これにより、脳内将棋盤の見えについて、熟達レベルと関連がある側面と関連しない側面が存在すること、脳内将棋盤の表現は多様であることが示唆された。
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