本研究は,相互評価活動下において考察記述の定型化指導を組み込む学習活動(以下,「相互評価と定型化指導による学習活動」)の定型化フレームを用いる群と用いない群を設定した上で中学校理科の授業を実施し,学習者の科学的な表現の育成に与える効果について明らかにすることを目的として行った。この目的を達成するために,学習者の調査問題と授業に関する感想,質問紙における回答の分析を行った。分析の結果から,次の3点が明らかになった。(1)定型化フレームを用いて相互評価と定型化指導による学習活動を行うことが,定型化フレームを用いないで相互評価と定型化指導による学習活動を行うことと比較して,還元の実験に関する結果(データ)と主張(結論),根拠(理由)の要素を含み,さらに,結果(データ)→主張(結論)→根拠(理由)の順序でつなぎ,科学的な表現になるように記述の書き直しを促したこと。(2)定型化フレームを用いて相互評価と定型化指導による学習活動を行うことで,考察の書き方や順序が分かり,考察を書きやすい意識を持ったこと。(3)その要因の一つは,考察の書き方を自分だけでなく相手への伝わりやすさを意識したことと,考察の内容と書き方,順序に関しての手段保有感の高まりとともに効力期待を高め,さらに,相手にとって伝わりやすく,適切に表現する考察を書くことができるといった結果期待を高め,学習への動機づけが促された可能性にあること。
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