N-(β-ハロアルキルカルボニル)グリシンエチルXCH(R)CH(R′)CONHCH2COOC2H5(X=I,Br;R,R′=H,CH3)とスズとを,添加剤(Mg,THF,etc.)の存在下に120~140℃ で反応させ,2種の官能基(アミド基とエステル基)を分子内にもつ有機スズ化合物X2Sn[CH(R)CH(R′)CONHCH2COOC2H5](A)を合成し,その性質などについて検討した。
IRスぺクトルの観察から,このスズ化合物(A)のアミド基のカルボニル酸素はスズと配位しているが,エステル基のカルボニル酸素はスズと配位していないと推察した。
スズ化合物(A)は,水中で加熱すると,アミド基とSn-X結合の両者が加水分解されるが,
n-オクタノール中で加熱するとアミド基もSn-X結合も,ともに加溶媒分解をおこさず,エステルのエチル基がエステル交換されてn-オクチル基と入れかわることを認めた。
すなわち,スズ化合物の官能基の性質は,官能基がスズ原子に配位することによって特異性を示すもので,立体的な分子構造からみて,スズ原子に配位できないような位置にある官能基は,そのような特異性を示さないことが観察できた。
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