基礎心疾患や薬物乱用の既往のない52歳男性.1993年12月より歯科治療を数回にわたって受けていた.94年6月発熱を認め,他院で抗生物質を投与され軽快した.95年4月再び発熱し,5月に入り労作時息切れ,浮腫,心拡大を認め,心不全が疑われ当科に入院した.心エコー図で三尖弁前尖の疣贅,右房・右室の拡大,三尖弁逆流を認め,三尖弁感染性心内膜炎と診断し,ペニシリンGにて治療を開始した.その後一旦下熱したが,治療中再び発熱,胸部X線上右中肺野の肺梗塞によると考えられる異常陰影が出現し,内科的に完治は困難と思われ6月28日手術を施行した.手術時,三尖弁前尖後面に付着していた疣贅の他に先天性心疾患などの異常はなく,同部の切除と三尖弁形成術を行い,経過は順調である.基礎心疾患や薬物乱用歴のない三尖弁感染性心内膜炎は,本邦では7例の報告があるのみで,まれな症例と思われ報告した.
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