われわれは最近, 2年4カ月齢の雄の雑種犬における鼻腔内に発生した円形細胞肉腫例に遭遇した. これに対し, 腫瘍塊の外科的摘除とX線照射療法の併用を試みたところ, 経過がすこぶる良好で, 術後1年以上も経た今日まで, 腫瘍の再発の兆しは見られない.
患犬は約3カ月前から持続している頑固な鼻出血と顔面の変形を主訴に来院した. 鼻漏の細胞診および腫瘍塊の生検材料の病理組織検査により円形細胞肉腫と診断された.
腫瘍塊は右鼻腔を占拠し, 鼻骨をはじめ, 鼻甲介から鼻中隔や上顎骨さらに前頭洞をも侵襲していた. これらについて, 鼻梁正中切開法による外科的摘除を行ったが, 前頭洞や上顎骨内に深く浸潤した腫瘍組織の一部は完全には廓清できなかった. そこで, その後, X線照射療法を実施した. 照射には, 治療用深部X線装置 (KXC-19-2型, 0.3m/m Cu+0.5m/m Alフィルター使用) を用い, 1回500rad (50rad10分間照射) を1週2回, 4週間, 合計8回4,000radの分割照射を行った.その結果, 腫瘍の再発や繁殖障害も認められず, 患犬は元気に生存している.
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