本シミュレータは,アンサンブルを行なう機会の少ない器楽訓練者を対象として開発したものである.これは,アンサンブルのうちの一奏者を抜かしてビデオ撮りし,それを大型スクリーンに再生して学習者がそれと合わせて器楽演奏することによって,アンサンブルの雰囲気などを模擬的に把握させようとするものである.ところでビデオ撮りを行なうときには,これが「シミュレータ」という特殊な用途であるために,各演奏者は通常のアンサンブルとは異なった位置・向きに座らなければならない.そこでここではビデオ撮りの手法に焦点をしぼり,演奏者の位置・向きと撮影カメラの位置・高さなどとの定量的な関係を明らかにし,さらにそれにもとづいて,本シミュレータを設計・制作し,またその評価を行なった.その結果,本設計法がコンサートシミュレータの制作にあたって有効な手法であることが明らかになった.
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