フェノール類混合物のNMRスペクトルを測定する場合,溶媒中にマグネシウム,鉄,コバルト,銅,亜鉛,銀,カドミウム,スズ,アンチモン,水銀などのハロゲン化物や硝酸塩を微量添加すると水酸基プロトンの吸収幅が著しく変化し,添加量を選ぶと各水酸基プロトンは半値幅が3Hz以下のよく分離した鋭い吸収になることを示した.添加量は金属塩の種類によって非常に異なるため,各種金属塩について最適添加量範囲を求めた.金属塩の添加効果は金属に配位する配位数の多いものほど,配位子の電気陰性度の大きいものほど優れ,金属塩の最適添加量はフェノール類の濃度,測定温度に比例し,p
Ka値とは逆比例の関係にあること,又添加量はフェノールのp
Ka値,濃度,温度に比例することから,プロトン間の交換速度と添加量の比例関係が認められ,このような現象は金属に配位する配位子の作用によって起こるものと推察した.
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