近年,在宅高齢者の養護者による虐待が増加し続けており,虐待対応の重要性は高まっている.本研究では,介護支援専門員が虐待の判断に迷う事例の分析により,虐待事例への介護支援専門員の対応プロセスを示し,その促進・阻害要因を明らかにすることで,迅速な対応を進める方策を示すことを目的とする.都内の居宅介護支援事業所600か所を無作為抽出し,調査票(自記式・無記名方式)の郵送調査を実施し,虐待の判断に迷った事例104事例(92事業所,107事例.うち非該当3事例を除く)の自由記述をグラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した.その結果,介護支援専門員の虐待対応プロセスでは,虐待に関する情報の蓄積が重要であることと,その促進要因として情報量・源が多いこと,阻害要因として養護者の事情への過度の配慮等が示された.これらを踏まえ,エイジズムの排除への取り組み,養護者支援や虐待対応への体制整備等の必要性を論ずる.
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