本研究は, 母親の愛着尺度日本版 (MAI-J) の信頼性と妥当性を検討することを目的とした. MAI-Jは, 乳児に対する母親の愛着を情意領域から定義した尺度で, 26項目で構成される. 日本版の翻訳は逆翻訳を行い, 日本版の翻訳が原文の意味を反映しているか確認した. 信頼性と妥当性の検討は, 255名の健康な乳児の母親の協力を得て行った.
信頼性は, 内的整合性を表すCronbach's αは0.92, 安定性はr=0.84 (p<0.000) であった. 妥当性は, 内容妥当性が支持された. 構成概念妥当性は十分に支持されなかったが, 主成分分析と因子分析から, MAI-Jは1次元に近い構造を示していた. 親となるとはどのようなものか日本版 (WPL-R-J) の下位尺度, 育児の評価との相関はr=0.63 (P<0.000) であり, かなり関連があった. 併存妥当性として用いた対児感情評定尺度との相関はr=0.38 (P<0.05) であり, 支持される程の関連はなかった.
これらから, MAI-Jの信頼性は支持されたが, 妥当性は十分に支持されているとはいえず, 今後, さらに検討が必要である.
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