熊本県は,九州の中央部に位置し豊富な水資源に恵まれており,県内に1,000か所を超える湧水源と408 の大小河川があり全国一の名水県とされている。豊かな地下水資源を県民共有の財産,貴重な戦略資源として位置づけ,将来に亘って水利用の持続性を確保するための取組みが注目を集めつつある。本県は,特に水俣病という悲惨な公害を経験し,この教訓を踏まえ,1990 年には熊本県環境基本条例を制定し,1991 年に条例に基づく基本指針並びに1996 年には環境基本計画が策定されている。こうした計画等に沿って取組みが進められた結果,公共用水域,特に河川では全体的に水質改善傾向が続いている。課題は,県をまたがる閉鎖性水域や市町村を越える河川や地下水への効果的,効率的な対策の推進にあたって,行政区域の壁がある。また,湧水源地域では,過疎高齢化が進行している。一方,都市圏の地下水涵養地域も涵養域の減少が続いている。明るい展望は,本県は,全国有数の地下水流動に関する調査研究の積み重ねがあり,2008 年には,県や流域市町村で第二次熊本地域地下水総合保全管理計画(行動計画)が策定された。さらに,2009 年には,戦略資源である地下水等の保全や多面的な活用のあり方等を検討する有識者による水の戦略会議が設置され将来に向けた議論が始まっている。
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