肺・胸郭系において胸水貯留の音の伝達特性に及ぼす影響を検討した. 実験的胸水として生理的食塩水を雑種成犬の胸腔内へ注入し, 気管切開口から胸壁までの音の伝達特性を100~1,000Hzの周波数範囲で測定した. 実験的胸水の貯留部では100~200Hzの範囲で周波数が低いほど音の
透過損失
が増大した. 一側の胸腔あたり5, 10, 15ml/kgの実験的胸水による100Hz純音の
透過損失
は, コントロールに較べてそれぞれ3.7±3.7 (平均±1標準偏差), 6.6±4.7, 10.0±5.7dB増大した. 実験的胸水貯留部より上部では音の
透過損失
の減少を認めた. 一側の胸腔あたり5, 10, 15ml/kgの実験的胸水による650Hz純音の
透過損失
はコントロールに較べてそれぞれ5.4±6.0, 7.8±6.9, 9.4±7.1dB減少した. 胸水貯留時の声音聴診の所見はこのような音の伝達特性の変化に起因すると考えた.
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