今,学校では,児童生徒の「生きる力」を育成するために総合的な学習の時間が新設され,作業や体験,問題解決的な学習が重視されている.筆者は「生きる力」を「社会的実践力」と規定しているが,この社会的実践力を学校教育で育成するためには,学校は少なくとも2つの課題を克服しなければならない.すなわち,第1に,学校教育において知識と行為の統一的な学習を実施することであり,第2に,社会を直視する学習を実施することである.これまでの学校教育は覚えさせることばかりに力を注ぎ,覚えたことを行為に結びつけることを怠ってきた.その上,学校は学校を取り巻く地域社会の問題を機敏に捉えてアクションを起こすことにも無関心であった.
筆者は,社会系教科教育(社会科,公民科,地理歴史科)の立場から,このような学校教育の現状に変革をもたらそうと考える.本論稿では,社会的実践力を培うために知識と行為の統一的な学習を図り,かつ,児童生徒が直面する社会問題を取り上げる教材開発とその実践について論述する.すなわち,筆者が構築した役割体験学習論から我々に差し迫った社会問題である市町村合併を取り上げ,教材化とその実践を行う.具体的には,「ゲーミング・シミュレーション教材『市町村合併』」を作成し,この教材を用いた実践を行い,教材の意義や学習効果について考究する.
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