高血圧症および虚血性心疾患患者に対する栄養食事指導では、果物や野菜を毎食摂取するDASH減塩食が推奨されている。「官能評価では、味の相乗作用による減塩効果が言われている。そこでDASH減塩食で果物を食事の最初に摂取することは、味覚閾値の変化を伴って減塩食が食べやすくなっている」との仮説を立て、この仮説を検証するために、健康人12人を被験者に、主食と主菜、副菜、果物の摂取順序の違いによる、味覚閾値の変化の有無を評価した。食事順序は、最初に果物、次いで副菜、最後に主食・主菜を摂取する、最初に主食・主菜、次いで副菜、最後に果物を摂取する、それぞれの食事順序で2週間DASH減塩食を摂取してもらい、食事を摂取する前後で、甘味、塩味、酸味、苦味の4味の味覚閾値を測定した。健康人に食事順序を変えてDASH減塩食を摂取してもらった結果、4味全てにおいて、果物を食事の最初に摂取するか、最後に摂取するかの食事順序の違いによる、DASH減塩食摂取期間前後の味覚閾値の変化は無かった。以上より、官能評価では味の相乗作用による減塩効果が言われているが、恒常的な味覚閾値の変化が伴っている訳ではないことが示唆された。
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