1. 高知県高知市や安芸市には侵略的外来種のアカギと同属のチュウゴクアカギが植栽されている.本研究では,チュウゴクアカギの高知市潮江地区における分布・逸出状況と結実特性,種子発芽特性,実生の成長特性を明らかにし,本種の分布拡大の可能性についての検討を行った.
2. チュウゴクアカギはアカギと同様に液果を生産し,種子は鳥によって散布される.高知市の潮江地区では,公園・街路樹として植栽されたチュウゴクアカギが9ヵ所で合計38個体確認され,その周辺では稚樹の発生も確認された.また,止まり木となるような街路樹がある場所では,母樹から離れた場所でも稚樹が確認された.
3. チュウゴクアカギは雌雄異株である.雌雄が複数本植栽されている都市公園で果序を採取し結実特性を調査した結果,果序当たりの果実数は3-19個,果実当たりの種子数は0-6個で,健全種子率も高かった(88%以上).果実1つあたりの種子数は孤立木よりも集団で植栽されている公園の方が多かったが,両者とも大量の種子が生産されていた.
4. 段階温度法により種子発芽実験を行った結果,チュウゴクアカギの種子は発芽に際して光要求性を示したものの,短期間の低温湿潤処理で光要求性が失われること,温度を段階的に上昇させる条件,下降させる条件でもほぼすべての種子が発芽することが明らかとなった.
5. 実生の耐陰性を明らかにするために栽培実験を行った結果,遮光率が高くなるほど実生の伸長成長量,地上部・地下部乾燥重量ともに増加した.過湿条件では遮光率95%の実生が徒長している傾向が見られたが,遮光率70%は0%よりも生育が良好であった.このことから本種の実生は被陰環境で良好に生育する可能性があることが示唆された.
6. 以上のことから,本種は母樹からの距離と果実食鳥の行動範囲,止まり木の分布に依存して逸出範囲を広げる可能性が示唆された.また種子は散布翌年の春にはほぼすべて発芽し,実生は被陰環境下でも良好に生育すると考えられる.今後分布域を拡大し植生に影響を与える可能性があるため,種子散布前の剪定などの管理が必要である.
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