本稿では 、 公益財団法⼈年⾦シニアプラン総合研究機構が実施した 「職 域における資産形成・⾦融経済教育等に関する調査 (2024 年 8 ⽉調査 ) 」 ( 以下「本調査」 ) 結果に基づき 、 職域における継続投資教育の現状と DC 加⼊者の意識・投資⾏動に焦点を当て 、 どの層に対しどのようにアプロー チすれば⽼後の資産形成が進み 、 ファイナンシャル・ウェルビーイング 向上に繋がるのかを考察する 。 職域での⾦融教育が企業型 DC 加⼊者を中⼼に⾏われていることから 、 調査対象者を企業型 DC 加⼊者と 、 ⽐較対象のため厚⽣年⾦に加⼊し iDeCo に拠出している者を加えた 。 したがって 、 全サンプルを「企業型 DCのみ」 、 「 iDeCo み」 、 「両⽅に加⼊」の 3 カテゴリに分類し特徴の 洗い出しを試みた 。 まず 、 全サンプルは厚⽣年⾦に加⼊している勤労者であり 、 企業型 DC 若しくは iDeCo に加⼊していることから 、 全体的に所得が⾼い層である と推測されるが 、 「企業型 DC のみ」と「両⽅に加⼊」に⽐べて 「 iDeCo のみ」は規模の⼩さな企業に属し⾮正規が多い傾向がみられた 。 そのた め職域での⾦融教育を受ける機会が少なく 、 ⾃助努⼒で資産形成を⾏っ ていることがわかった 。 「企業型 DC のみ」は⾦銭的に余裕があるものの多忙で無関心の傾向がみられ、この層に対しどのようにアプローチするかがポイントとなる。 将来の企業価値を高める人的資本経営の観点から、企業にとっては従業員に対して継続投資教育や資産形成に積極的に関わる姿勢が肝心である。パーソナライズされたコンテンツやインセンティブを与えることで興味を持続させる工夫、ライフプランニングを容易にする資産の見える化、専門家による個別アドバイスの活用等により行動変容に繋げるメニューの導入が必要である。いずれにしてもコストが嵩むことは明らかであり、これら企業への負担軽減の施策も必須である。低コストで企業年金が導入できる仕組みと、企業規模や就労環境に拘わらず取りこぼしのない企業年金制度への拡充が求められる。金融教育のカバー率を上げ、より若いうちから生涯の資金設計を意識し家計管理にフィードバックできる環境整備が、老後の資産形成に寄与するものと思われる。
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