近代化遺産として国の重要文化財に指定された、旧国鉄信越本線横川・軽井沢間の廃線敷に残るトンネル、橋梁、変電所建物などの鉄道構造物の形状、寸法、変状などを調査した。
碓氷第三橋梁に対して三次元三角測量を実施して、設計図面と照合した結果、本橋に変形は生じていないことがわかった。他の橋梁でも、基礎の移動など重大な変状の兆候は認められず、良好な状態にある。しかし、水分の凍結融解に起因する亀裂や表面剥離エフロレッセンスの発生、植物根に起因する目地切れなどが観察された。
トンネル坑門の碓氷線における標準タイプと、廃止から30余年の間に、トンネル内部の覆工の変状すなわち、クラックやモルタル吹き付け部分の剥離、煉瓦側壁の崩落が進行している。
変電所建物は屋根の崩落が年を追って加速度的に進行し、投石による窓の破損、落書きなど、人為的な毀損も加わって、荒廃の度を深めている。
このような現況調査の結果を踏まえて、それらの保存・修復の方針、遊歩道としての活用などについて述べる。
なお、本報告は、土木史研究委員会碓氷峠旧線鉄道構造物調査小委員会 (田島二郎委員長) の成果の一部を、構造物の現況を中心に紹介するものである。
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