1990~1991年に分離したMethicillin-resistant
Staphylococcus aureus200株に対するArbekacin (ABK) の抗菌活性を知ることを目的に, 合計15抗菌性物質の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 合せて供試株由来別のコアグラーゼ型の成績をまとめて以下の結論を得た。
1. 200株のコアグラーゼ型はII型635%, IV型18.5%, VII型11.0%, その他7.0%であつたが, II型は呼吸器系由来株, IV型は外科系由来株に高い割合であり, 近年における諸家の報告及び自験例の報告とほぼ同等だった。
2. すべてのコアグラーゼ型をまとめた200株に対するMethicillin, Cephalosporins 6薬剤, Imipenem, Fosfomycin (FOM), Gentamicin, Tobramycin, そしてClindamycinのMIC
50は50~>100μg/mlの高い値を示していたが, ABK, Minocycline (MINO), Vancomycin (VCM) のMIC
50・MIC
90はABK 0.78μg/m4l・3.13μg/ml, MINO 0.39μg/ml・50μg/ml, VCM 0.78μg/ml・1.56μg/mlだつた。
3. コアグラーゼIV型株に対するABKのMIC
90は, 12.5μg/mlとやや高い値を示していた。しかし, ABKに6.25~12.5μg/mlのMIC値を示す株は1986年, 更に1988~1989年分離株を対象とした自験例にも存在していたことから, 今回の検討で認められたABKに比較的高いMIC値を示したこれらの株が, ABKの使用によつて出現したのかは今後の検討課題と考えられた。
4. 現状において我が国で伝播しているMRSAの大部分は, 多剤耐性化が加速していること, 更にβ-Lactamsには益々高度耐性化していることが示唆されたが, ABKはそうした株にも強い抗菌活性を示した。そして, ABKのMRSAに対するβ-LactamsやFOMとの強い抗菌併用効果が報告されていることから, ABKはMRSA感染症に対する有用性が期待できる数少ない, 貴重なアミノ配糖体系抗生物質である。
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