本稿は、政府税制調査会が様々なアクターから統制を受ける中で、いかにその役割を変化させていったのか、総会議事録データを中心に文書資料を通時的に分析した。分析からは以下の点が明らかになった。
第一に、諮問の文字数が一定レベルまで増えると答申本文のページ数は多くなり、一定レベルを超えると逆にページ数が減少する傾向である。
第二に、総会における官僚の発言割合は減少し、役職階層が低下していることである。
第三に、自民党税調と政府税調は、税制改正大綱と答申の発表日をめぐり1980年代初頭まで対抗関係にあったが、その後、短期的な利害調整は党税調に委ね、政府税調は中長期の税制に専念する棲み分けに移行したことである。
第四に、委員の中でも利害関係者は、政府税調の答申が政策に反映される蓋然性が高いほど、過剰に発言する傾向があることである。
第五に、委員の意見をとりまとめる主な方法には、意見反映、表現修正、別冊、口頭対応というパターンがあることである。
かつて税制の最終決定主体であった政府税調は、基本的事項を調査審議する会議体に変化したことが、分析結果から多面的に裏付けられた。
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